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営業初日も間近に迫った日の昼下がり(二岩営業所にて)

2004年(H16年)5月10日、仙台市に新たな路線事業者がバスの路線運行を開始しました。
その会社は、愛子観光バス。社名の示すように、元々は観光輸送一本で経営を行っていた事業者です。
仙台市交通局が運行している錦ヶ丘地区の路線バスの補完を目的に開業しました。
仙台市内の路線事業者としては1970年(S45年)の宮城交通の営業参入以来*1、34年ぶりの新たな事業者となりました。

ところで、同社は運行開始に先立って、運用に用いる車輛を全て仙台市交通局自動車部の廃車公売より購入して準備しました。このような事情があれば、尚更弊サイトで取り上げないわけにはいきません。
そこで、仙台市交通局に次いで2つめのスポットライトを当てる事業者に、愛子観光バスを選択しました。これは簡単な同社の車輛紹介・路線紹介です。
※1 : 宮城交通は元々宮城バス、宮城中央バス、仙南バスの3社が経営統合して設立された事業者で、これを最新の参入事業者を捉えるならば1970年が最後となります。ただし、このルーツとなった事業者の頃にまで話を戻せば、1919年の仙台市営バスのルーツとなった“仙台市街乗合自動車”が最後となります。報道各社でばらばらの年数で報道しておりましたので、私なりの交通史解釈を書かせて頂きました。

1. 最近の動き
05/08/0? 増備車の営業投入。
04/11/15 開業以来初のダイヤ改正。この改正を機に土曜ダイヤが新設されました。
04/05/18 栗生停留所開設の事業認可が下りたのを受け、栗生停留所にも停車。
04/05/10 仙台駅前〜愛子駅前〜錦ヶ丘八丁目間にて開業。運行開始。開業当初は“栗生”停留所は通過扱い。側面方向幕にも記載されず。
04/04/09 東北運輸局がプレスリリースで路線営業を公表。
04/01/16 路線営業事業を東北運輸局に申請。
2. 営業路線形態

2004年11月15のダイヤ改正時点では、この系統一本のみの運行です。片道およそ30分、全区間乗車での運賃は600円です。
運行頻度はラッシュ時が30分間隔、データイムが60分〜120分間隔となっています。これは錦ヶ丘の住民層を配慮した運行便数の設定で、比較的高齢者は少ないため、本当は通勤通学時間帯の運行のみでも十分と言えるところがあるのでしょう。ただ、市バスを補完する事を目的に事業に参入していますので、データイムの運行も欠かせず、これ以上増やせば不合理で、また減らせば客も遠退くという、微妙なところであると推測できます。
なお、日中の便はほぼ全てが仙山線の列車と接続するようダイヤが組まれてあるみたいです。
3. 運行車輛
先述しましたように、営業開始当時の車輛6台全てが仙台市交通局自動車部で廃車となった三菱のP-MP618Mです。開業から一年と3ヶ月が経過した2005年8月、南海バスからの中古車を導入し、車輛が若干若返りました。在籍する車輛は全て、観光バスの車庫と仙山線を隔てて反対側にある二岩営業所に配置されています。
関係者の方のお話によれば、導入車種の選定基準となったのは単純に同一形式で必要台数が確保できればそれで良い、という事だったらしく、これが市バスの廃車を購入した真相とのこと。他のシャーシメーカーでもやはり6台揃う見込みがあれば、別のメーカーだったのかもしれません。
1台当たり30万円で購入したそうですが、全ての車輛をリニューアルしていますので、その改修費用に1台200万円ほど必要だったそうです。余談ながら、利用客が乗ってくれれば新車を入れるけど、という事で、ノンステ・ワンステなどが導入されるのも、利用客数次第なのだそうです。
さて、気になる改装内容ですが、外観塗装は当然、車内ではシートモケットの交換、運転機器の修繕、テールランプ・ウィンカーランプのレンズ交換が行われています。ワンマン機器は整理券発券機・運賃箱が小田原機器製、車内放送機器は松下製です。ただし、車内放送機器といえど、肉声放送のみで、テープデッキは専らアンプとして用いているそうです。
興味深いのは車内のシートでして、赤いモケットの座席は全て優先席となっています。しかし、目に留まるのは赤いシートばかり。つまり、殆どのシートが優先席という事なのです。ある意味、横浜市営地下鉄と同じような制度をバスに持ち込んだ例と言え、これは評価すべき制度と言えそうです。仙台市バス・宮城交通にも見習って欲しいものです。

[左写真 : 車外写真(FL側)]
[左写真 : 車外写真(RR側)]


[左写真 : 車内写真]
[右写真 : 方向幕の写真(宮城交通の最近の幕に似ている気も...)]
いずれも二岩営業所にて。車外写真RR側が950号である以外は全て945号。
なお、開業日である2004年5月10日の時点で既に車体側面に広告ステッカーが貼付されているため、このような広告のない姿は今となっては大変貴重です。

在籍車輛一覧 (車号をクリックすると写真と簡単な説明のページへジャンプします)
三菱 P-MP618M 宮城200か09-45 宮城200か09-46 宮城200か09-47
宮城200か09-48 宮城200か09-50 宮城200か09-51
三菱 U-MP218M 宮城200か11-46

おまけ --- 方向幕対照表 ---
00 と ま れ
01 回   送
02 愛  子  駅  経  由
仙  台  駅  前
03 愛  子  駅  経  由
錦 ヶ 丘 八 丁 目
以下未調査です。
手動巻取りのため、巻き過ぎ防止の文字が前面にも出ています。
ところで、“愛子観光”などといった具合の社名表記幕は用意されていないのでしょうか。広告のポスターですら“回送”表示でしたので、これは前から疑問だったのですが...。詳細をご存知の方、ご教示願います。


このページは愛子観光バス株式会社の社員の皆様のご協力により取材させて頂いた情報を元に製作致しました。ご多忙の中ご協力を頂き、有難うございました。
営業所内の写真は全て許可を得た上での撮影です。

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